おばあちゃんの話(1)
「フランス語で「おばあちゃん」は « grand-mère »」と習うと思うが、ニュアンスとしてより近いのは « mamie »だろう。 « grand-mère »が「祖母」とすると、 « mamie »は特に子どもが直接呼びかけるときに使う語だから、まさしく「おばあちゃん」という感じだ。ちなみに「おじいちゃん」は « papie »。パピとマミ、幼児語だけあって音もかわいい。 ところで筆者の名前Mamiは、 « mamie »とほぼ同じ発音だ。フランスに留学中、こんなことがあった。大学寮の共同台所兼食堂で日本人の友人と食事をしながら談笑していたところ、同じ寮生で友人の隣の部屋に住むフランス人が深刻な顔をして近づいてきて、私を手で示しながら友人にこう言った。「彼女はまだ若いんだから、マミなんて呼ぶのは意地悪だよ」。友人と私は一瞬きょとんとした後、彼の言っている意味が分かった。「名前がマミなんです」と私が笑いながら言うと、そのフランス人もつい先ほどの私たちと同じように一瞬きょとんとした後、笑顔になった。「なんだ、そうだったのか。よかった」。優しいフランス人青年だった。(フランス言語文化コース教員 塚島)...