若者の映画割引鑑賞術

日本では25歳(の学生)までが若者に入るようです。たとえばクラシック音楽やバレエのチケットにはU25学生券なるものが存在します。一方フランスでは、26歳までなら学生でなくとも若者でいられます。ビザさえ持っていれば(長期留学であれば)、日本人でも26歳以下である限りルーヴルやオルセーにタダで入れるのです。ビザを持っていなくても(短期留学でも)、格安で観劇できるし、コンサートや映画館にだって行けます。若者に優しい国フランスは、独立系映画館に優しい国でもあります。そんなフランスには、映画館の年パスが存在します。しかも若者には割引が適応されます。年約200ユーロでUGC illimitéカードを作れば、若者は行き放題の映画館で寝ようが飯を食おうが(フランスでは映画館および公共交通機関で持込飲食無問題)不敵に構えていられます。日本映画の特集も頻繁に組まれるので心配には及びません(但、小津や森田芳光など玄人好みかも……)。ざっと計算したところ20-30回ほど行けば元は取れます。特にパリ5区のカルティエ・ラタンは映画館の宝庫で、毎日通っても、梯子しても飽きないほど。割引を駆使した映画鑑賞は若者の特権なのです。2025年、ぎりぎり若者の25歳がお送りしました。[パリの映画館Reflet Médicisの内装写真→](文学研究科フランス文学専修 松田龍之介)...
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文法とおばあさん

私が22の歳に、初めてフランスに留学した時のこと。同じ時期に留学中の日本人たちと、「到着してから、どんな感じ?」と、近況を教えあっていました。そのうちの一人の話です。ホームステイ先のマダムから、「あなたの部屋の机の上に、おばあさんの本があるから」と言われた。「おばあさんの本??? ってどうして???」意味がよく分からなかったが、机にのっかっていたのは、文法の本だった。この人は、「あなたの部屋の机の上に、文法の本がある」 Il y a un livre de grammaire sur la table de ta chambre.とマダムが言ったのを、「あなたの部屋の机の上に、おばあさんの本があるから」 Il y a un livre de grand-mère sur la table de ta chambre.と聞き違えてしまったのでした。文法もおばあさんも、カタカナで書けば「グランメール」。(フランス言語文化コース教員 友谷)...
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おばあちゃんの話(2)

 前のコラムを読んでいただいていたら出オチに近いのだが、続けて筆者の名前に関わる話をもうひとつ。やはりフランスに留学中のときのこと。日本人の友人(仮にAさんとしよう)から、携帯電話に着信があった。出てみると、明らかにAさんではない、少し年配のフランス人らしき(フランス語ネイティヴ)女性の声。そして言う。「あなたの孫娘さんの携帯電話を拾ったんです」。は? 孫娘? 孫なんていないけれど…。とにかくAさんが携帯電話を落として、それを拾ってくれた人からの着信だと分かった。Aさんは大学寮暮らしだったので、Aさんと同じ寮に住む共通の友人を通じてAさんに携帯電話が見つかった旨を伝え、無事Aさんは携帯電話を取り戻した。後日Aさんから受け渡しのときの話を聞いた。携帯電話を拾ったフランス人のマダムが通信履歴を開くと、よく分からない(おそらく日本人の)名前の中に、見知った単語 があった。 « Mami »だ。これは携帯を落とした子のおばあちゃんmamieに違いない、おばあちゃんなら安心、電話がなくてもどうにかして落とした本人と連絡が取れるだろう――そう考えたらしい。優しいフランス人のマダムだった。しかし、フランスに限らずヨーロッパでは転売目的で携帯電話を盗む人も多いので、ご用心。(フランス言語文化コース教員 塚島)...
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おばあちゃんの話(1)

 「フランス語で「おばあちゃん」は « grand-mère »」と習うと思うが、ニュアンスとしてより近いのは « mamie »だろう。 « grand-mère »が「祖母」とすると、 « mamie »は特に子どもが直接呼びかけるときに使う語だから、まさしく「おばあちゃん」という感じだ。ちなみに「おじいちゃん」は « papie »。パピとマミ、幼児語だけあって音もかわいい。 ところで筆者の名前Mamiは、 « mamie »とほぼ同じ発音だ。フランスに留学中、こんなことがあった。大学寮の共同台所兼食堂で日本人の友人と食事をしながら談笑していたところ、同じ寮生で友人の隣の部屋に住むフランス人が深刻な顔をして近づいてきて、私を手で示しながら友人にこう言った。「彼女はまだ若いんだから、マミなんて呼ぶのは意地悪だよ」。友人と私は一瞬きょとんとした後、彼の言っている意味が分かった。「名前がマミなんです」と私が笑いながら言うと、そのフランス人もつい先ほどの私たちと同じように一瞬きょとんとした後、笑顔になった。「なんだ、そうだったのか。よかった」。優しいフランス人青年だった。(フランス言語文化コース教員 塚島)...
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