おばあちゃんの話(2)

 前のコラムを読んでいただいていたら出オチに近いのだが、続けて筆者の名前に関わる話をもうひとつ。やはりフランスに留学中のときのこと。日本人の友人(仮にAさんとしよう)から、携帯電話に着信があった。出てみると、明らかにAさんではない、少し年配のフランス人らしき(フランス語ネイティヴ)女性の声。そして言う。「あなたの孫娘さんの携帯電話を拾ったんです」。は? 孫娘? 孫なんていないけれど…。とにかくAさんが携帯電話を落として、それを拾ってくれた人からの着信だと分かった。Aさんは大学寮暮らしだったので、Aさんと同じ寮に住む共通の友人を通じてAさんに携帯電話が見つかった旨を伝え、無事Aさんは携帯電話を取り戻した。後日Aさんから受け渡しのときの話を聞いた。携帯電話を拾ったフランス人のマダムが通信履歴を開くと、よく分からない(おそらく日本人の)名前の中に、見知った単語 があった。 « Mami »だ。これは携帯を落とした子のおばあちゃんmamieに違いない、おばあちゃんなら安心、電話がなくてもどうにかして落とした本人と連絡が取れるだろう――そう考えたらしい。優しいフランス人のマダムだった。しかし、フランスに限らずヨーロッパでは転売目的で携帯電話を盗む人も多いので、ご用心。(フランス言語文化コース教員 塚島)...
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おばあちゃんの話(1)

 「フランス語で「おばあちゃん」は « grand-mère »」と習うと思うが、ニュアンスとしてより近いのは « mamie »だろう。 « grand-mère »が「祖母」とすると、 « mamie »は特に子どもが直接呼びかけるときに使う語だから、まさしく「おばあちゃん」という感じだ。ちなみに「おじいちゃん」は « papie »。パピとマミ、幼児語だけあって音もかわいい。 ところで筆者の名前Mamiは、 « mamie »とほぼ同じ発音だ。フランスに留学中、こんなことがあった。大学寮の共同台所兼食堂で日本人の友人と食事をしながら談笑していたところ、同じ寮生で友人の隣の部屋に住むフランス人が深刻な顔をして近づいてきて、私を手で示しながら友人にこう言った。「彼女はまだ若いんだから、マミなんて呼ぶのは意地悪だよ」。友人と私は一瞬きょとんとした後、彼の言っている意味が分かった。「名前がマミなんです」と私が笑いながら言うと、そのフランス人もつい先ほどの私たちと同じように一瞬きょとんとした後、笑顔になった。「なんだ、そうだったのか。よかった」。優しいフランス人青年だった。(フランス言語文化コース教員 塚島)...
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