疲労・クリープ破壊

非鉄金属の高サイクル疲労寿命曲線(S-N曲線)は鉄鋼のように明瞭な折れ点(疲労限度;σw)を持たないと言われます.ですが,本当にそうでしょうか? 我々はアルミニウム合金について109(ギガ)サイクルレベルの超高サイクル疲労試験を行い,このような一般認識が必ずしも妥当ではないことを示しました.微小な人工欠陥を導入した試験片には,微小な亀裂の停留によってもたらされる疲労限度が現れます.一方,平滑材にはこのような限界が出現しません.この違いは,初期の微小亀裂の発生・進展機構が全く異なることに由来すると考えられます.

※詳細はこちらを参照ください(for more detail, see):
Y. Takahashi, H. Yoshitake, R. Nakamichi, T. Wada, M. Takuma, T. Shikama, H. Noguchi, “Fatigue limit investigation of 6061-T6 aluminium alloy in giga-cycle regime”, Materials Science & Engineering A, Vol. 614, 2014, pp. 243-249 (DOI: 10.1016/j.msea.2014.07.039).


LSIパッケージや異材継手などの構造物には,金属/樹脂(ポリマー)を接合した界面が存在します.樹脂は融点が比較的高い金属材料とは異なり,室温においても時間依存型の塑性変形(クリープ)を受けます.金属/樹脂界面端部からの時間依存型剥離破壊発生に関しては,強度則が不明です.我々は、SUS/エポキシ継手を用いて時間依存型の剥離亀裂発生寿命線図を得ると同時に,界面端近傍の応力場を有限要素法(FEM)により解析しました.その結果,剥離破壊は,界面端近傍の応力場を表す二つの変数(応力特異場パラメーター,特異性指数)が一定の関係を満たすときに発生すること明らかにしました.これは,従来知られていた静的破壊における強度則が時間依存型破壊へも拡張できることを意味する重要な発見です.

※詳細はこちらを参照ください(for more detail, see):
Y. Takahashi, K. Inoue, M. Takuma, K. Saitoh, T. Sato, “Fracture mechanics criterion of time-dependent crack initiation from interface free-edge in adhesively bonded butt joints”, Engineering Fracture Mechanics, vol. 186, 2017, pp. 368-377. (DOI: 10.1016/j.engfracmech.2017.08.017)