研究紹介


材料の構造・強度・機能の本質を理解し、評価技術と新材料の開発をすすめ、機器・構造物の破壊事故防止をめざす

原子力プラントの配管破損事故や新幹線の台車のき裂事故は、まだ記憶に新しい。機械や構造物は所定の期間中に厳しい使用環境に耐え、破壊はもちろんのこと過大な変形をも生じることなく十分な安全性を維持し、その機能を果たさなければならない。しかし、形あるものは必ず壊れ、モノには寿命があることは自然界の鉄則である。したがって機器を設計する場合、破壊に至る寿命を予測して耐用期間を予測寿命以下に制限する。しかし、予測の限度と評価技術の落差により、機器・構造物が設定寿命を満たさない場合がある。これが実際に起こる破壊事故の原因になっている。現代技術は、このような機械・構造物の破壊事故を未然に防止することはできないのであろうか?。当研究室では、このような社会的ニーズに応える工学的諸問題を研究課題にしている。

  1. 非破壊検査法による構造部材の健全性評価と材料の評価・設計システム: 非破壊検査法と信号処理技術を用いて、材料の破壊機構の解明や機械的特性の評価に関する研究を行っている。また、構造部材に要求される機能は多種多様化してきていることから、種々の使用環境や力学的条件を考慮して材料特性を評価する方法論の確立が望まれている。しかし、各種の情報と材料特性との関係は非線形的であることが多く、解析的な手法では処理できない場合が多い。そこで、情報処理手法や知識工学などを用いて材料特性を評価するシステムを構築する研究を行っている。そして、その評価に基づいて要求機能を満たす材料を如何にして創製するかといった材料設計に関する実験データやノウハウを体系化する研究を行っている。
  2. 力学的材料特性評価とコンピュータシミュレーション技術: 材料の強度や機能の評価および破壊現象の解明を計算力学手法(コンピュータシミュレーション)、とくに分子動力学法によるミクロな立場から取り扱う研究を行 っている。材料力学・解析力学・連続体力学・統計力学・量子力学をベースとして、最新の計算機環境のもとで多彩な数値シミュレーション手法を開発/応用している。固体力学および計算力学の分野に関連する工学分野で重要な最先端のトピックスを主なテーマとして研究を進めている。
  3. 材料強度メカニズムの解明: 材料の変形や破壊の様式は、負荷形態や寸 法に依存するため、複雑である。このため、材料の強度(変形や破壊に対する抵抗値)は一般に「測るもの(物性値)」として便宜的に扱われる。このような画一化は工学的に必要な反面、強度特性の本質をブラックボックスにした結果、強度設計・評価上の不合理を生み出す一因となっている。そこで、変形や破壊の微視的特性を電子顕微鏡、計算機などのツールにより解析し、「なぜその強度になるのか」「強度を上げるにはどうすればよいか」「どのような評価が合理的か」に答えるべく研究を行っている。
  4. 粉末冶金技術を利用したプロセス開発と材料特性評価:主に金属粉末を成形・焼結する粉末冶金技術をベースにして、既存の材料とは異なる機能を付与することを目的とした研究を行っている。また,機能の向上と材料の強度が相反しないように強度の評価も行い、適切なプロセスの構築をおこなっている。材料の機能としては摺動性や熱電特性に注目し、実験や計算からのアプローチで課題解決を目指している。

研究班(研究グループ)について

材料工学研究室は、以下の4つの班(グループ)にわかれて各テーマ研究を遂行しつつ、一体で運営しています。

非破壊班

宅間 正則 教授

  • 疲労損傷評価
  • 複合材料の機能評価と設計
  • スマート構造とスマート材料の開発

ナノ班

齋藤 賢一 教授

  • 分子動力学法による材料強度と機能の評価
  • 機械現象の粒子法シミュレーション
  • 計算ナノテクノロジーの応用

材料強度班

高橋 可昌 教授

  • 金属疲労のメカニズム解明
  • マイクロ材料の強度実験と応力解析
  • 材料組織解析と強度への影響評価

プロセス班

佐藤 知広 准教授

  • 粉末冶金プロセスを用いた材料開発
  • 計算機援用による材料機能評価
  • 機能発現のための材料設計