Research

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この研究室では集積回路の設計を研究しています.集積回路は様々な用途・様々な製造プロセスがあり,その性能を最大に引き出すことは簡単ではありません.アナログ・RF回路を主なターゲットに,いかに性能を引き出すか,いかに効率よく設計を行なうかなどを研究しています.

研究に必要なスキルはテーマによって様々です.極低温の物性から機械学習・最適化まで,いろいろなテーマがあります.共通基盤となるアナログ回路設計の基礎は全員で学び,そのあとテーマに沿って内容が分岐していきます.極限環境での集積回路に興味がある人,世界最高性能を目指したい人,自分でICを作りたい人,最適化・自動化に興味がある人など,指向に応じていろいろなテーマとアプローチを用意しています.

研究テーマ

量子ビット制御用Cryo-CMOS RFフロントエンド

量子コンピュータは現在のコンピュータでは到底実用時間で解けないような問題を解くことができるシステムです.量子ビットと呼ばれる特殊な素子を用いた計算は,現在の計算機システムとは異なる計算複雑性を実現できることが分かっています.このテーマでは量子ビットを制御し量子ビットから情報を読み出すための集積回路を研究しています.量子ビットには様々な種類が存在していますが,我々がターゲットにしているのは超伝導量子ビットと呼ばれるものです.これは数十mKという極低温に置かれており,現在のシステムでは量子ビットを室温に置いた制御装置によって制御しています.ところがこの方式では量子ビットの数が増えるに従って極低温と室温をつなぐ配線の数も増えていき,数百個の物理量子ビットで配線数が限界を迎えます.量子コンピュータがその真価を発揮するには100万個の物理量子ビットが必要だと考えられており,現在の方式で到底100万個の量子ビットに対応することはできません.

そこで制御や読み出しを極低温環境 (希釈冷凍機) の中で行なう Cryo-CMOS技術が注目されています.これはCMOS集積回路を希釈冷凍機の4 K (−269度)ステージに置き,そこから量子ビットを制御する方法です.この技術は期待されている一方でまだ課題も大く残っています.特に冷凍機の温度が上がらないよう消費電力を極限まで落とす必要があり,世界中で研究開発が進められています.

この研究は
JSTムーンショット目標6「誤り耐性汎用量子コンピュータ」
小林PM「スケーラブルな高集積量子誤り訂正システムの開発」(QUBECS)
の一部となっており,高周波信号を扱うRFフロントエンドを担当しています.高周波かつ極低温という条件では,素子の特性も明らかではありません.そのため,素子のモデルの構築から回路設計までを行なっています.

アナログ回路自動設計

アナログ回路の設計は考慮すべき性能指標と設計パラメータが多く,多次元・多目的の最適化問題となります.そのため,機械学習やAIを使ってもまだ自動的に設計することはできていません.この研究室では,そこその性能の回路を簡単に短時間に自動設計することを目指しています.実際の回路では,すべての回路ブロックが論文に載るような高性能なものである必要はありません.しかし教科書に載っているような基本的な回路構成であっても,製造プロセスや要求仕様に応じて調整が必要です.この部分を自動化し,アナログ回路の設計効率化を目指しています.

オープンソースシリコン

集積回路の設計には,専用のEDA (Electronic Design Automation)ツールと,設計に用いるデータセット PDK (Process Design Kit) が必要です.従来,年間数千万円~数億円の高額なEDAツール群と,守秘契約の下で開示されるPDKの両方,そして高額な製造費用を持つ人にしか集積回路の設計はできませんでした.以前からこれらをオープンソース化するという活動はありましたが,2019年にefabless/Google によって整備されたオープンソースのEDA・PDKが公開され,オープンソースの集積回路設計が急速に発展しています.オープンソース化の研究をしているわけではありませんが,オープンソースシリコンの普及に関する活動を行なっています.アナログ回路自動設計の研究はオープンソース環境で行なっています.