2023.12.26 岡野憲司准教授の論文がFrontiers in Microbiology誌に受理されました。

タイトル:Subtractive modification of bacterial consortium using antisense peptide nucleic acids

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fmicb.2023.1321428/full

【研究概要】

微生物の集合体である菌叢は、宿主の健康改善や土壌の元素循環などに重要です。菌叢の働きを自在に改変・制御できれば、健康寿命の延伸や持続的耕地利用といった社会課題の解決に貢献できると期待できます。そこで、本論文では細胞膜透過作用のあるペプチド(CPP)を用いて、標的微生物の必須遺伝子から転写されるmRNAに結合するアンチセンスペプチド核酸 (PNA) を菌叢微生物に導入し、菌種特異的に増殖を抑制する手法の開発を行いました(下図A)。

具体的にはKFFKFFKFFKのアミノ酸配列からなるCPPに対して、Escherichia coliの脂肪酸合成関連遺伝子であるacpP、またはPseudomonas putidaの細胞分裂関連遺伝子であるftsZに対するアンチセンスPNAを結合させた融合材料であるCPP-PNAを合成しました。合成したCPP-PNAをE. coliP. putidaPseudomonas fluorescensLactiplantibacillus plantarumの4菌からなる人工菌叢に添加し、菌種特異的な増殖抑制が可能であるかを評価しました(下図B)。E. coliに対するCPP-PNAを添加した結果、E. coliの増殖を抑制することができました。面白いことにP. putidaに対するCPP-PNAを添加した場合、P. putidaの増殖が抑制されるだけではなくL. plantarumの増殖能が低下することや、P. fluorescensの増殖能が向上することがわかりました。さらなる解析の結果、4菌の共培養系において、P. putidaL. plantarumの増殖を促進し、P. fluorescensの増殖を阻害していたことがわかりました。従って、アンチセンスPNAは、菌叢改変ツールとしてのみならず、微生物間の増殖連関を解析するためのツールとしても有用であることが示唆され、菌叢機能の理解と応用のための強力なツールになると期待できます。