鐘楼の地震被害

 本プロジェクトで対象とする単層四本柱の鐘楼は、伝統的木造建築の中でも比較的単純な架構形式を持ちます。一方で、高さに対して幅が狭く、全体の約3割の重さの鐘を中心に吊り、高い基壇の上に載るという構造的な特徴があります。これまで、地震時の鐘楼の跳躍現象や鐘の制振効果に対して、学術的な関心が寄せられることはありましたが、鐘楼と一口にいっても規模や構造形式は様々で、規模や構造形式がその耐震性能に与える影響については検討されてきませんでした。

 2023年の奥能登地震では、震度6強を観測した石川県珠洲市正院町および周辺で、数多くの鐘楼が被災しました。この地域には規模や構造形式の異なる鐘楼が密集しており、地震によって様々な被害が発生しています。本プロジェクトでは被災した鐘楼の調査を行い、規模や構造形式が地震被害にどのような影響を与えたかを検証し、被災した鐘楼に対する適切な補修・補強の方法を提案します。境内建物が被災した場合、本堂などに比べて鐘楼の補修や補強はどうしても後回しにされてしまうことが多いため、補強効果だけでなく、補強のコスト・工期にも配慮して、提案していく予定です。

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