社会インフラの老朽化が深刻な問題となっており，維持管理のあり方についての関心が高まっている．昨今の財政状況下では，すべての箇所の補修や補強，交換を実施することは困難であるため，限られた費用で，大きなリスクを回避できるように優先順位をつけて維持管理していくことが求められている．
ここでは，主に農業水利施設のパイプラインに着目する．農業水利施設は簡便なパイプライン構造をとり，1 箇所の漏水や破損事故により広範囲に及ぶ被害を容易に引き起こす可能性が高い．そのため，計画的かつ広範囲に渡り，パイプライン管内の調査・診断を行い，事前に問題箇所を把握する必要がある．本研究では，従来のテレビカメラ調査において，地上と管内の関係を把握することは容易でないことに注目し，テレビカメラの調査画像をマッピングした3 次元モデルによる拡張現実感表示を行い，作業プロセス間での，調査・診断情報の共有と，コミュニケーションの円滑化を図るシステムを提案する．