有機化学 1000本ノックシリーズ (化学同人)

著者の矢野が普段の講義で配る(大変好評の:本人談)大量の演習問題を本にした感じで、学部の知識定着用です。つまり、定期テスト〜院試対策にまで使えます。タイトルの通り1000題収録されています。勘違いして頂きたくないのは、必ずしも1000問解く必要はないということです。多くの方に利用して欲しいので、それぞれの実力に合うように難易度には差を付けています。有機化学が苦手な人は基礎から初めて中難易度の所までやってもらったら良いですし、専門にはならないけど、単位は取らないといけないという人は初級レベルをマスターしてもらえれば十分だと思います。逆に基本は大丈夫だという人は応用の部分を優先的にやっていくと良いと思います。なるべく多くのニーズに応えられ、覚えてもらえるようなタイトルでなおかつキリが良い数字というのがたまたま「1000本ノック」の1000というだけで、本質的な意味はありません。つまり、1000問やらないと完成しないということではありません。1000問やることに拘り過ぎず、また1000という数字にビビり過ぎないでください。

以下著者談
著者のポリシーに満ちた本です!有機化学全体ではなく、講義で十分に触れられることが少なく、苦手とする人が多い分野にスポットを当てた今までにはなかった本です。十分にこなすのはすごく大変でしんどいと思いますが、これをやったら絶対にわかるようになります!いや、わからないはずがない!!

有機化学 1000本ノック 【命名法編】

出版年月日 2019年4月2日
定価 1500円 +税
収録題数 1002問

CとHの化合物から始まり、アルコール、カルボン酸のO、アミン、ニトリルのN、ハロゲンを含んだ化合物まで幅広く扱っています。分子内にBr、COOH、二重結合を含んだ分子の優先度はわかっていますか?命名にはルールがあります。それを見やすいようにした公式のフローチャートを掲載しています。この通りやればしっかり命名できるようになります。このフローチャートが頭の中に入った時には命名は得意分野になっているでしょう。
*あくまで苦手な学部生向けの本で学部の修学範囲に絞っているので、複素環式化合物や付加/減去命名法などの大学院レベルの複雑な命名に関しては扱っておりません。
《レビュー》 ★★★
いつか記載されます。

有機化学 1000本ノック 【立体化学編】

出版年月日 2019年4月2日
定価 1800円 +税
収録題数 1001問

R体・S体、E体・Z体の見分け方と、これを用いた同一化合物、エナンチオマー、ジアステレオマーの識別の仕方、実践練習をこれでもかというくらいに扱っています。著者本人が立体とか異性体オタクであることから生まれた1冊でしょう。本人が好き過ぎるので仕方ないです。立体構造が立体に見えない。そんな状態で将来不斉中心がある分子を研究できますか?そういった化学病もしっかり治します!
《レビュー》 ★★
いつか記載されます。

有機化学 1000本ノック 【反応機構編】


出版年月日 2019年8月25日
定価 2700円 +税
収録題数 1000問

「これとこれを混ぜたらこれができる」と暗記してはいけません。有機化学反応はそんなに浅いものではないので、そんなことをやってたら3日で詰みます(例えば、「H(水素)はHを呼ぶ」は有能な呪文ですが、全てに適応できている訳ではありません。)。丸暗記は愚行です!有機反応で大切なのは電子の動きと安定性です。電子は電子が豊富な所から不足している所へと動きます。それを曲がった矢印を用いて書き表します。これが苦手な人が多いです。これがわからないというのが有機化学が嫌いになる一番の理由でしょう。実際の講義の試験でも、生成物は合っているのに反応機構の矢印が間違っていたり、矢印の出どころがおかしいので生成物もおかしいというような答案が多く見られます。本書では、「反応物を見ると自然に手が動いて電子の流れが書ける」を目標に、「電子の流れ」に拒否反応を示している方に救いの手を差し伸べ、「わからないから嫌い」から「わかるから好き」にしようという一冊となっております。芳香族炭化水素の配向位など電子論だけでは説明できず、フロンティア軌道を考えなければならないものもありますが、まずは、そして学部生のうちは電子論をしっかりやって下さい。
とにかく考えて書けるようになるのが目標です。パッと開けたページの問題が解けるようになったらあなたの勝ちです。
《レビュー》 ★★★★
学部で扱う反応機構を大まかなグループに分け、『反応機構のポイント』で説明して、基本問題で演習→発展問題で力試しというのが一番流れになっています。
『反応機構のポイント』では、曲がった矢印に番号を振っているので、どの矢印から書き始めれば良いのかがわかります。『逃げてから攻撃されるのか、攻撃されて逃げるのか』。かなり曖昧な表現ですが、わかる人にはわかってもらえると思います。これが紙面上でちゃんとわかるので、これには好感を持てました。
基本問題に関してですが、前書きに「これまでは反応の前と後の物質を覚えておけば良かったのに・・・」的な記述があり、あえて生成物まで載せているのかなと思います。「最初と最後を覚えたって意味ないんだヨ!」という著者の憎たらしい性格が滲み出ています。
ただ、この『1000本ノックシリーズ』は化学が超苦手な人向けの本であり、基本問題は初級レベルはクリアできているのかという確認です。生成物が書いてあるなんてアシストがあり過ぎです。ということで、こんなレベルはいち早くクリアして、反応物しか書いていない発展問題をやりましょう。
しかし、そんな発展問題も分野毎では数がかなり少ないので、ここまでやった後に、人をぶん殴ったら怪我をさせるくらい分厚い人名本の章末問題などをやるのが良いと思います。この『1000本ノックシリーズ』は超初級〜中級向けなので、得意にまで持って行きたい方は、レベルの高い問題に当たれる力が付いてきたらどんどんステップアップしていって下さいね。

月刊『化学』 (化学同人)

★ 連載 ★

誰も教えてくれない!有機化学の基本のキ(2017年9月〜2019年3月、全19回)